法人の役員に対する給与について

○ 法人税とは

株式会社、合資会社、合名会社、合同会社及び有限会社(特例)は法人です。

法人には、それぞれの法人の事業年度の所得に対して法人税が課税されます。

この法人の所得とは、簡単にいえば儲け、つまり、売上をはじめとする法人に入ってくるあらゆる収入から仕入れ、販売のための費用や法人を継続させるためのすべての費用を差し引いた残りのことです。

したがいまして、法人が少しでも儲かった場合は、法人税を国に納めることになります。

○ 法人の所得計算は

ただし、現実の法人の所得の計算は上記のようなざっくりしたものではなく、国の施策や公平公正な課税、社会の変化などなどいろんなことを踏まえて、法人税法と租税特別措置法で細かく規定されています。

たとえば、法人税法22条では、法人に入ってくるものは売上だけではなくただでもらったものもすべて収入になります。といいながらも、他の会社のもらう配当は、二重課税防止の観点から一部利益にしなくてもいいとされていますし、法人が持っている資産の評価益なども会社が恣意的に所得計算ができるとの観点から原則として利益には認められていません。

また、法人の経費の場合でも、会社の資産の評価損は上記の評価益と同じ理由で認められていませんし、交際費は濫費の抑制の観点から、その一部を経費としては認めていません。

○ 役員に対する給与について

以上を踏まえて、法人の経費の中でよく取扱いが問題になる役員の給与について解説します。

なお、役員に対する給与は以前は役員報酬といいましたが、商法から会社法が別の法律となったことを受けて、平成18年の税制改正で役員給与というようになりました。

また、以下の説明で『法人』というとわかりにくいので、『会社』と表現します。

・ 会社の役員の関係

従業員と会社の関係は雇用契約で、従業員は会社に対し労働を提供し、会社は労働の対価として給料を支払うこととなり、一般的には就業規則等でその計算方法等が明記されています。

これに対し、役員と会社の関係は委任契約です。役員は通常は2年をその期間として定められ、法人の経営を委任されます。

そして、その役員の給与は、定款もしくは株主総会の決議によるものとされています。

・ 法人税法上の役員給与

ところで、我が国の会社の大多数は、いわゆる中小企業で、会社の所有者たる株主とその株主から会社の経営を委任される経営者たる役員が同一者であることが少なくありません。

そうすると、役員が自らの給与を株主総会の手続きを経た上で勝手に決議することも可能となります。つまり、会社の利益が上がれば役員自らが臨時株主総会等で給料を増加させることにより、利益調整ができることになります。

そこで、法人税法では、この弊害を防ぐとともに会社と役員の関係が委任契約であることを踏まえ、会社のひとつの年度内に一定の時期を除き、原則として役員給与の増減をできないこととしています。

この一定の時期とは、会社と役員の委任契約のはじまりが、定時株主総会であるとの認識から、株主総会での改定決議を意識して、会社の各事業年度の開始の日から3ヶ月以内の改定を認めるとしています。

・ 法人税法上の役員賞与

従前の商法では、会社の役員に対する賞与は利益処分のひとつと考えられていました。

それを受けて、法人税法上の役員賞与の取扱いも利益処分であるとして、会社の経理で費用として支出していたとしても、費用としては認めていませんでした。

ところが、平成14年の商法改正により、役員賞与は利益処分ではなく役員報酬の一部であるとされ、現在の会社法でも役員賞与は役員に対する給与の中に含まれるとされています。

法人税法もこれを受けて、役員賞与の費用化を認めることにしましたが、ここで、役員賞与を無制限に認めると、結局は簡単に利益調整ができることとなってしまいます。

そこで、法人税法では、役員賞与を事前届出制にすることによって、会社の利益調整に一定の制限を設けました。

具体的には、役員の給与が前述のとおり株主総会で決議されるのを根拠として、役員賞与も株主総会の決議事項であることから、株主総会での決議後1ヶ月以内に税務署長に届出することを費用として認めるための要件にしました。

・ 給与を年の途中で増減額したり、届出なしで賞与を支払ったら

前述のとおり法人税法では、役員の給与や賞与に一定の制限を設けています。したがいまして、給与を一定の時期以外に増額あるいは減額したら、その増額や減額した差額が会社の費用として認められないこととなり、所得金額に加算されます。

また、税務署長に届出せずに役員に賞与を支払ったり、あるいは同様の行為と認められるような行為をしてしまった場合にも、その賞与の額は会社の費用として認められないこととなり、所得金額に加算されます。

なお、ここで挙げた例はあくまでも一般的なものであり、実際にはさまざまな要件が加わることで回答が変わる可能性があります。

したがいまして、実務におきましては税理士に相談されることをお勧めします。

寺嶋芳朗税理士事務所
税理士 寺嶋 芳朗

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