A.空き家のことで、困っていませんか?
1.空き家を相続した。
2.空き家状態の親の家を売って、介護費用を捻出したい。
3.前に住んでいた家が、空き家状態になっている。 等
B.全国で空き家が増えています。
総務省統計(平成25年度)では、全国の総住宅数は6063万戸,空き家数は830万戸。
空き家の総住宅数に占める割合は13.5%です。年間約20万戸の空き家が増えており、このままでは平成32年頃には1000万戸が空き家という計算になります。
総務省は、空き家を、
①売却用住宅、②賃貸用住宅、③別荘等の二次的住宅、④その他の住宅、
に分類しています。①から③の空き家は、用途が決まっているので、いずれ空き家状態から抜け出して利用されることが見込めます。
しかし、④その他の住宅は、適切な管理が行われずに放置されるおそれがあります。
最近は、④「その他の住宅」が特に増加しています。
C.空き家が増える理由
所有者が高齢になり施設に入所した、相続手続が進まない等で、空き家になります。
年月を経ても手付かずのまま老朽化し、解体されずに残され、空き家が増え続けます。
人口が減り続けている状況では、年月を経るほど、空き家の利用が難しくなります。
D.空き家を放置していると、
空き家が適切に管理されないと、周辺住民に多大な迷惑がかかります。
・倒壊、屋根、外壁等の落下、火災(放火を含む)
・不法侵入、落書き
・ごみの不法投棄、山積
・悪臭、蠅や蜂の発生、動物の侵入
・雑草や落葉の飛散、枝の越境 等の問題を生じます。
空き家を放置していたことで問題が生じると、所有者が責任を問われます。
E.国の対応
平成26年空家等に関する国及び市町村による施策を総合的かつ計画的に推進する「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下、空き家対策特別措置法)が制定されました(平成27年2月26日施行)。
この法律は、適切な管理が行われていない空き家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることから、地域住民の生命、身体又は財産を保護し、その生活環境の保全を図り、あわせて空き家等の活用を促進しようとするものです。
F.空き家を抱えると
空き家は、使っていないのに、
・放置していたことで生じた弊害による賠償責任リスク
・固定資産税の支払
・維持管理費(電気・水道等の光熱費、庭木の剪定等)の支払
・周辺住民からの苦情対応
等の負担ばかりかかります。まさに、”負”動産になりかねません。
自宅近くにあるなら倉庫代わりに当面は利用できそうですが、遠方ではそうもいきません。
親の介護に奔走しているうちに、実家の空き家を抱えることになり困っている方も多いはずです。
若い頃には時間がなく、年をとれば体を動かすのも大変です。時間ばかりが過ぎてゆきます。
相続手続きが進まないために、こうした固定資産税や維持管理費を、相続人のうちの一人が何年も負担し続けていることもよくあります。
その相続人が預金等を相続していても、実家の空き家の管理や解体で、毎年目減りしてゆきます。
G.さらに負担が増える
前述の「空き家対策特別措置法」では、特に危険度が高い空き家を「特定空家等」と定義し、行政による対策ができるようになりました。
危険な空き家の除却
空き家が「特定空家等」に指定されると、行政から指導・勧告・命令がされ、所有者は自己負担で早急に改善しなければなりません。放置すると行政から強制撤去されかねません。
解体費用
建物の解体には、百万円単位の費用が一時的に必要になります。
地域や立地事情によって異なりますが、500万円以上になることもあります。
行政が強制撤去(代執行)した建物の解体費用は、所有者に請求にされます。
固定資産税軽減措置の見直し
建物が建っている土地には、固定資産税の特例措置があり、一定の広さまで税額が6分の1に軽減されています。
そのため、固定資産税が安くなるので、空き家を壊さずに残している事例は多くありました。
しかし、特定空き家等に指定されると、この特例措置が適用されなくなることがあります。
空き家にしておくことが、得ではなくなるのです。
H. 空き家の解消のために
建物は、使わないでいると、傷みも激しく外観も悪くなり、価値が下がるばかりです。
空き家(空き地も同じ)を解消するには、原因を一つずつ解決してゆく必要があります。
① 自己所有の空き家が遠方にあって、売り方が分からない。
② 親が認知症で施設に入った。施設費用を払うため実家を売りたいが、親名義なので処分できない。
③ 空き家の相続手続が進まない。
・相続人間の話し合いが進まない。
・相続人間で遺産を平等に分けたいが、空き家になった不動産の価値が分からない。
・相続人の中に、行方不明者や判断能力のない人がいて、遺産分割協議ができない。
・長年放置していたので、相続人が亡くなり、次の相続人が誰か分からない。
・空き家の相続方法で迷っている(単独名義か、共有名義か、放っておくか)
・実家は残しておきたいと、空き家の処分に同意しない相続人がいる。
これらの問題は、一人で悩んでも解決しません。例えば、
・処分のために、まず相続登記を済ませる。
・家庭裁判所に、認知症の方の成年後見人や、不在者の財産管理人等を選任してもらう。
・近隣の方に購入する気はないか問い合わせる。 等
手続を踏んでゆけば、きっと道は開けます。
まずは、原因と対処方法を的確にアドバイスできる専門家への相談から始めてください。
なお、故人が一人で住んでいたために相続したのちに空き家となってしまった家屋及び土地については、その家屋につき耐震リフォーム等を行なうあるいはその家屋を取り壊すなど、一定の要件に合う場合には、その相続した土地.家屋の譲渡利益から最高3,000万円の特別控除を受けられることとなりました。
詳しくは、税理士にお尋ねください。
(文責 司法書士 田中康博)